鍼灸コラム
2025 / 10 / 10 15:26
鍼灸は人を整える言葉である

鍼灸は「肩こり」「腰痛」のためのもの、
そんなふうに思われている方がまだ多いように感じます。
けれど、鍼灸とは本来、身体と心と生き方をつなぎ直す智慧です。
痛みや不調は、単なる「故障」ではなく、
身体があなたに送っている“メッセージ”のようなもの。
東洋医学では、
「気」「血」「水」の流れが滞ると、心や思考まで影響すると考えます。
そして鍼灸は、その流れをそっとほどきながら、
あなた自身が本来持っている“治る力”をもう一度思い出させてくれる。
鍼は、身体に刺す道具ではなく、
身体に“声をかける手紙”のようなものです。
そこにあるのは「操作」ではなく「対話」。
皮膚の下の世界に、そっと耳を澄ませる仕事です。
私がこの道を続けてきたのは、
“症状をなくす”ためだけではありません。
その人の中にある「回復しようとする力」──
それを信じ、引き出す瞬間に、何よりの希望を感じるからです。
鍼灸は、派手ではありません。
でも、静かで深く、確実に人を変えていく力があります。
この力を、もっと多くの人に伝えたい。
「痛みを取る技術」ではなく、
自分を整え、命の声を聞く方法としての鍼灸を。
派手な言葉よりも、確かな手の温度で。
それが、私が伝えたい“鍼灸のほんとう”です。