鍼灸コラム
神戸東洋医療学院にて講座をさせていただきました
神戸東洋医療学院で卒業生として講義をさせていただきました。4年目となりました。
年を追うことに女性の鍼灸師志望が増えていることに驚かされます。
少しでも私の経験や想いが役に立てばいいなと思います。
私自身も一年生の最初に習う「整体観念」が鍼灸師として1番大事って事に気づいたのは卒業して何年も経ってからです。
東洋医学の根本にある考え方のひとつが「整体観念(せいたいかんねん)」です。
これは「身体を部分ではなく、全体として みる」という考え方です。
たとえば肩がこるとき、単に「肩の筋肉が固い」とは限りません。
胃腸の疲れや、ストレス、睡眠不足、気温や湿度の影響など、
さまざまな要素が関わり合って「肩こり」という形で現れているのです。
東洋医学では、内臓・筋肉・血流・気のめぐり、そして感情までもがすべてつながったひとつの生命の流れとしてとらえます。
また、人の身体は自然のリズムの中で生かされており、季節の変化や気候、月のリズムなども私たちに影響を与えています。
このように、身体の中だけでなく「自然との調和」までを含めて全体を見る。
それが「整体観念」です。
日々の不調を、“どこかひとつの異常”ではなく、
身体全体と心、そして生活や環境とのバランスの乱れとしてとらえると、原因が見えやすくなり、自然と回復の方向に向かいやすくなります。
東洋医学や鍼灸、茜メソッドの施術も、この「整体観念」をもとにしています。
ひとつの症状を治すだけでなく、心と身体が調和し、自分らしい自然体に戻ること。それこそが「整う」ということなのです。
技術ばかりではなく、ヒトに寄り添える人間性がとても大切な仕事です。
1人でも多くの人を救える鍼灸師になって欲しいです。
「ながら生活」は未病を病気に進行させる
~自分の身体に“戻る力”を取り戻そう~
スマホを見ながら食事をする。
テレビをつけたまま家事をする。
音楽やSNSを流しっぱなしで仕事をする。
私たちの生活は、いつのまにか「ながら」が当たり前になりました。
便利で効率的に見えるこの習慣——
実は、自分の体調変化に気づけなくなる最大の原因です。
*感覚のアンテナが鈍る
人の身体は、本来とても繊細にできています。
少し冷えた、眠れていない、呼吸が浅い――
そんな小さな変化も、本来なら身体が教えてくれる。
でも、意識が常に「外側」に向いていると、
そのサインをキャッチする内受容感覚(インターセプション)が鈍っていきます。
結果として、
・疲れているのに気づかない
・食べすぎ・ストレス・姿勢の崩れを放置
・気づいたときには「自律神経の乱れ」や「慢性不調」に
という流れになってしまうのです。
*「ながら」は身体と心の分離を生む
東洋医学では、「気」が身体と心を結んでいると考えます。
気が乱れると、心と身体はバラバラに動き始めます。
「ながら生活」とは、まさにこの心身分離の状態。
身体はここにあるのに、意識(心)は別の場所に飛んでいる。
すると、エネルギーの流れが分断され、肩こりや不眠、頭の重さ、感情の揺れなどが現れやすくなります。
*今ここに戻る練習
1日数分でも、
何も「しない」時間を持ってみてください。
呼吸の音、身体の重さ、心臓の鼓動を感じるだけでいいのです。
最初は退屈に感じても、続けるうちに体温、呼吸、内臓の感覚、心の緊張や安心……
身体が発している小さな声に気づけるようになります。
その瞬間、あなたの「感覚」は再び目を覚まします。
それが、自分の身体に戻る力です。
鍼灸は人を整える言葉である
鍼灸は「肩こり」「腰痛」のためのもの、
そんなふうに思われている方がまだ多いように感じます。
けれど、鍼灸とは本来、身体と心と生き方をつなぎ直す智慧です。
痛みや不調は、単なる「故障」ではなく、
身体があなたに送っている“メッセージ”のようなもの。
東洋医学では、
「気」「血」「水」の流れが滞ると、心や思考まで影響すると考えます。
そして鍼灸は、その流れをそっとほどきながら、
あなた自身が本来持っている“治る力”をもう一度思い出させてくれる。
鍼は、身体に刺す道具ではなく、
身体に“声をかける手紙”のようなものです。
そこにあるのは「操作」ではなく「対話」。
皮膚の下の世界に、そっと耳を澄ませる仕事です。
私がこの道を続けてきたのは、
“症状をなくす”ためだけではありません。
その人の中にある「回復しようとする力」──
それを信じ、引き出す瞬間に、何よりの希望を感じるからです。
鍼灸は、派手ではありません。
でも、静かで深く、確実に人を変えていく力があります。
この力を、もっと多くの人に伝えたい。
「痛みを取る技術」ではなく、
自分を整え、命の声を聞く方法としての鍼灸を。
派手な言葉よりも、確かな手の温度で。
それが、私が伝えたい“鍼灸のほんとう”です。
あなたのその不調、自律神経かも
「最近、よく眠れない」「疲れているのにリラックスできない」「胃腸の調子が整わない」「動悸や息切れがする」「フワフワしためまいがある」など
そんな声をよく耳にします。現代医学の検査はとても精密ですが、数字や画像に表れない不調も少なくありません。
その背景にあるのが 自律神経のアンバランス。
自律神経は、私たちの意思とは関係なく、呼吸・血流・消化・体温調節・睡眠などをコントロールしています。ストレスや生活リズムの乱れで交感神経が働きすぎると、体はずっと緊張モードのままになり、息苦しさ、胃腸の不調、頭痛、めまい、耳鳴り、動悸、不眠などが現れます。
鍼灸は、東洋医学の知恵をもとにツボなどを刺激し、血流を改善しながら、体の「休む力(副交感神経)」を回復させる伝統的な方法です。
薬を使わず、自分の体が本来持っている調整力を呼び覚ますのが特長。細い鍼で体表のセンサーを優しく刺激すると、脳や神経にリラックスのサインが伝わり、緊張がほぐれ、体のめぐりが変わっていきます。
「原因不明」と言われた不調も、体をまるごと見て整える鍼灸だからこそアプローチできる部分があります。
検査で「異常なし」と言われても、体の声を信じてみてください。
鍼灸は、静かに寄り添いながら、あなたの自己回復力をそっと後押ししてくれる伝統医療です。

